民法(総則)

第1編(1条~174条の2) 一部抜粋

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(基本原則)
 1条
1項 私権は、公共の福祉に適合しなければならない。
2項 権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。
3項 権利の濫用は、これを許さない。
 3条 1項 私権の享有は、出生に始まる。
2項 外国人は、法令又は条約の規定により禁止される場合を除き、私権を享有する。
(未成年者の法律行為)
 5条
1項 未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、この限りでない。
2項 前項の規定に反する法律行為は、取り消すことができる。
3項 第1項の規定にかかわらず、法定代理人が目的を定めて処分を許した財産は、その目的の範囲内において、未成年者が自由に処分することができる。目的を定めないで処分を許した財産を処分するときも、同様とする。
(未成年者の営業の許可)
 6条
1項 一種又は数種の営業を許された未成年者は、その営業に関しては、成年者と同一の行為能力を有する。
2項 前項の場合において、未成年者がその営業に堪えることができない事由があるときは、その法定代理人は、第4編(親族)の規定に従い、その許可を取り消し、又はこれを制限することができる。
(後見開始の審判)
 7条
精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、4親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、後見開始の審判をすることができる。
(成年被後見人及び成年後見人)
 8条
後見開始の審判を受けた者は、成年被後見人とし、これに成年後見人を付する。
(保佐開始の審判)
 11条
精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分である者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、4親等内の親族、後見人、後見監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、保佐開始の審判をすることができる。ただし、第7条に規定する原因がある者については、この限りでない。
(被保佐人及び保佐人)
 12条
保佐開始の審判を受けた者は、被保佐人とし、これに保佐人を付する。
(保佐人の同意を要する行為等)
 13条
1項 被保佐人が次に掲げる行為をするには、その保佐人の同意を得なければならない。ただし、第9条ただし書に規定する行為については、この限りでない。
 1号 元本を領収し、又は利用すること。
 2号 借財又は保証をすること。
 3号 不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為をすること。
 4号 訴訟行為をすること。
 5号 贈与、和解又は仲裁合意(仲裁法(平成15年法律第138号)第2条第1項に規定する仲裁合意をいう。)をすること。
 6号 相続の承認若しくは放棄又は遺産の分割をすること。
 7号 贈与の申込みを拒絶し、遺贈を放棄し、負担付贈与の申込みを承諾し、又は負担付遺贈を承認すること。
 8号 新築、改築、増築又は大修繕をすること。
 9号 第602条に定める期間を超える賃貸借をすること。
2項 家庭裁判所は、第11条本文に規定する者又は保佐人若しくは保佐監督人の請求により、被保佐人が前項各号に掲げる行為以外の行為をする場合であってもその保佐人の同意を得なければならない旨の審判をすることができる。ただし、第9条ただし書に規定する行為については、この限りでない。
3項 保佐人の同意を得なければならない行為について、保佐人が被保佐人の利益を害するおそれがないにもかかわらず同意をしないときは、家庭裁判所は、被保佐人の請求により、保佐人の同意に代わる許可を与えることができる。
4項 保佐人の同意を得なければならない行為であって、その同意又はこれに代わる許可を得ないでしたものは、取り消すことができる。
(補助開始の審判)
 15条
1項 精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分である者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、4親等内の親族、後見人、後見監督人、保佐人、保佐監督人又は検察官の請求により、補助開始の審判をすることができる。ただし、第7条又は第11条本文に規定する原因がある者については、この限りでない。
2項 本人以外の者の請求により補助開始の審判をするには、本人の同意がなければならない。
3項 補助開始の審判は、第17条第1項の審判又は第876条の9第1項の審判とともにしなければならない。
(被補助人及び補助人)
 16条
補助開始の審判を受けた者は、被補助人とし、これに補助人を付する。
(補助人の同意を要する旨の審判等)
 17条
1項 家庭裁判所は、第15条第1項本文に規定する者又は補助人若しくは補助監督人の請求により、被補助人が特定の法律行為をするにはその補助人の同意を得なければならない旨の審判をすることができる。ただし、その審判によりその同意を得なければならないものとすることができる行為は、第13条第1項に規定する行為の一部に限る。
2項 本人以外の者の請求により前項の審判をするには、本人の同意がなければならない。
3項 補助人の同意を得なければならない行為について、補助人が被補助人の利益を害するおそれがないにもかかわらず同意をしないときは、家庭裁判所は、被補助人の請求により、補助人の同意に代わる許可を与えることができる。
4項 補助人の同意を得なければならない行為であって、その同意又はこれに代わる許可を得ないでしたものは、取り消すことができる。
(制限行為能力者の相手方の催告権)
 20条
1項 制限行為能力者(未成年者、成年被後見人、被保佐人及び第17条第1項の審判を受けた被補助人をいう。以下同じ。)の相手方は、その制限行為能力者が行為能力者(行為能力の制限を受けない者をいう。以下同じ。)となった後、その者に対し、1箇月以上の期間を定めて、その期間内にその取り消すことができる行為を追認するかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。この場合において、その者がその期間内に確答を発しないときは、その行為を追認したものとみなす。
2項 制限行為能力者の相手方が、制限行為能力者が行為能力者とならない間に、その法定代理人、保佐人又は補助人に対し、その権限内の行為について前項に規定する催告をした場合において、これらの者が同項の期間内に確答を発しないときも、同項後段と同様とする。
3項 特別の方式を要する行為については、前2項の期間内にその方式を具備した旨の通知を発しないときは、その行為を取り消したものとみなす。
4項 制限行為能力者の相手方は、被保佐人又は第17条第1項の審判を受けた被補助人に対しては、第1項の期間内にその保佐人又は補助人の追認を得るべき旨の催告をすることができる。この場合において、その被保佐人又は被補助人がその期間内にその追認を得た旨の通知を発しないときは、その行為を取り消したものとみなす。
(制限行為能力者の詐術)
 21条
制限行為能力者が行為能力者であることを信じさせるため詐術を用いたときは、その行為を取り消すことができない。
(不在者の財産の管理)
 25条
1項 従来の住所又は居所を去った者(以下「不在者」という。)がその財産の管理人(以下この節において単に「管理人」という。)を置かなかったときは、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求により、その財産の管理について必要な処分を命ずることができる。本人の不在中に管理人の権限が消滅したときも、同様とする。
2項 前項の規定による命令後、本人が管理人を置いたときは、家庭裁判所は、その管理人、利害関係人又は検察官の請求により、その命令を取り消さなければならない。
(失踪の宣告)
 30条
1項 不在者の生死が7年間明らかでないときは、家庭裁判所は、利害関係人の請求により、失踪の宣告をすることができる。
2項 戦地に臨んだ者、沈没した船舶の中に在った者その他死亡の原因となるべき危難に遭遇した者の生死が、それぞれ、戦争が止んだ後、船舶が沈没した後又はその他の危難が去った後1年間明らかでないときも、前項と同様とする。
(失踪の宣告の効力)
 31条
前条第1項の規定により失踪の宣告を受けた者は同項の期間が満了した時に、同条第2項の規定により失踪の宣告を受けた者はその危難が去った時に、死亡したものとみなす。
(失踪の宣告の取消し)
 32条
1項 失踪者が生存すること又は前条に規定する時と異なる時に死亡したことの証明があったときは、家庭裁判所は、本人又は利害関係人の請求により、失踪の宣告を取り消さなければならない。この場合において、その取消しは、失踪の宣告後その取消し前に善意でした行為の効力に影響を及ぼさない。
2項 失踪の宣告によって財産を得た者は、その取消しによって権利を失う。ただし、現に利益を受けている限度においてのみ、その財産を返還する義務を負う。
(同時死亡の推定)
 32条の2
数人の者が死亡した場合において、そのうちの1人が他の者の死亡後になお生存していたことが明らかでないときは、これらの者は、同時に死亡したものと推定する。
(贈与又は遺贈に関する規定の準用)
 41条
1項 生前の処分で寄附行為をするときは、その性質に反しない限り、贈与に関する規定を準用する。
2項 遺言で寄附行為をするときは、その性質に反しない限り、遺贈に関する規定を準用する。
(主物及び従物)
 87条
1項 物の所有者が、その物の常用に供するため、自己の所有に属する他の物をこれに附属させたときは、その附属させた物を従物とする。
2項 従物は、主物の処分に従う。
(天然果実及び法定果実)
 88条
1項 物の用法に従い収取する産出物を天然果実とする。
2項 物の使用の対価として受けるべき金銭その他の物を法定果実とする。
(果実の帰属)
 89条
1項 天然果実は、その元物から分離する時に、これを収取する権利を有する者に帰属する。
2項 法定果実は、これを収取する権利の存続期間に応じて、日割計算によりこれを取得する。
(心裡留保)
 93条
意思表示は、表意者がその真意ではないことを知ってしたときであっても、そのためにその効力を妨げられない。ただし、相手方が表意者の真意を知り、又は知ることができたときは、その意思表示は、無効とする。
(虚偽表示)
 94条
1項 相手方と通じてした虚偽の意思表示は、無効とする。
2項 前項の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。
(錯誤)
 95条
意思表示は、法律行為の要素に錯誤があったときは、無効とする。ただし、表意者に重大な過失があったときは、表意者は、自らその無効を主張することができない。
(詐欺又は強迫)
 96条
1項 詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。
2項 相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知っていたときに限り、その意思表示を取り消すことができる。
3項 前2項の規定による詐欺による意思表示の取消しは、善意の第三者に対抗することができない。
(隔地者に対する意思表示)
 97条
1項 隔地者に対する意思表示は、その通知が相手方に到達した時からその効力を生ずる。
2項 隔地者に対する意思表示は、表意者が通知を発した後に死亡し、又は行為能力を喪失したときであっても、そのためにその効力を妨げられない。
(意思表示の受領能力)
 98条の2
意思表示の相手方がその意思表示を受けた時に未成年者又は成年被後見人であったときは、その意思表示をもってその相手方に対抗することができない。ただし、その法定代理人がその意思表示を知った後は、この限りでない。
(代理行為の要件及び効果)
 99条
1項 代理人がその権限内において本人のためにすることを示してした意思表示は、本人に対して直接にその効力を生ずる。
2項 前項の規定は、第三者が代理人に対してした意思表示について準用する。
(本人のためにすることを示さない意思表示)
 100条
代理人が本人のためにすることを示さないでした意思表示は、自己のためにしたものとみなす。ただし、相手方が、代理人が本人のためにすることを知り、又は知ることができたときは、前条第1項の規定を準用する。
(代理行為の瑕疵)
 101条
1項 意思表示の効力が意思の不存在、詐欺、強迫又はある事情を知っていたこと若しくは知らなかったことにつき過失があったことによって影響を受けるべき場合には、その事実の有無は、代理人について決するものとする。
2項 特定の法律行為をすることを委託された場合において、代理人が本人の指図に従ってその行為をしたときは、本人は、自ら知っていた事情について代理人が知らなかったことを主張することができない。本人が過失によって知らなかった事情についても、同様とする。
(代理人の行為能力)
 102条
代理人は、行為能力者であることを要しない。
(任意代理人による復代理人の選任)
 104条
委任による代理人は、本人の許諾を得たとき、又はやむを得ない事由があるときでなければ、復代理人を選任することができない。
(復代理人を選任した代理人の責任)
 105条
1項 代理人は、前条の規定により復代理人を選任したときは、その選任及び監督について、本人に対してその責任を負う。
2項 代理人は、本人の指名に従って復代理人を選任したときは、前項の責任を負わない。ただし、その代理人が、復代理人が不適任又は不誠実であることを知りながら、その旨を本人に通知し又は復代理人を解任することを怠ったときは、この限りでない。
(法定代理人による復代理人の選任)
 106条
法定代理人は、自己の責任で復代理人を選任することができる。この場合において、やむを得ない事由があるときは、前条第1項の責任のみを負う。
(復代理人の権限等)
 107条
1項 復代理人は、その権限内の行為について、本人を代表する。
2項 復代理人は、本人及び第三者に対して、代理人と同一の権利を有し、義務を負う。
(代理権授与の表示による表見代理)
 109条
第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示した者は、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間でした行為について、その責任を負う。ただし、第三者が、その他人が代理権を与えられていないことを知り、又は過失によって知らなかったときは、この限りでない。
(権限外の行為の表見代理)
 110条
前条本文の規定は、代理人がその権限外の行為をした場合において、第三者が代理人の権限があると信ずべき正当な理由があるときについて準用する。
(代理権消滅後の表見代理)
 112条
代理権の消滅は、善意の第三者に対抗することができない。ただし、第三者が過失によってその事実を知らなかったときは、この限りでない。
(無権代理)
 113条
1項 代理権を有しない者が他人の代理人としてした契約は、本人がその追認をしなければ、本人に対してその効力を生じない。
2項 追認又はその拒絶は、相手方に対してしなければ、その相手方に対抗することができない。ただし、相手方がその事実を知ったときは、この限りでない。
(無権代理の相手方の催告権)
 114条
前条の場合において、相手方は、本人に対し、相当の期間を定めて、その期間内に追認をするかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。この場合において、本人がその期間内に確答をしないときは、追認を拒絶したものとみなす。
(無権代理の相手方の取消権)
 115条
代理権を有しない者がした契約は、本人が追認をしない間は、相手方が取り消すことができる。ただし、契約の時において代理権を有しないことを相手方が知っていたときは、この限りでない。
(無権代理行為の追認)
 116条
追認は、別段の意思表示がないときは、契約の時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし、第三者の権利を害することはできない。
(無権代理人の責任)
 117条
1項 他人の代理人として契約をした者は、自己の代理権を証明することができず、かつ、本人の追認を得ることができなかったときは、相手方の選択に従い、相手方に対して履行又は損害賠償の責任を負う。
2項 前項の規定は、他人の代理人として契約をした者が代理権を有しないことを相手方が知っていたとき、若しくは過失によって知らなかったとき、又は他人の代理人として契約をした者が行為能力を有しなかったときは、適用しない。
(無効な行為の追認)
 119条
無効な行為は、追認によっても、その効力を生じない。ただし、当事者がその行為の無効であることを知って追認をしたときは、新たな行為をしたものとみなす。
(取消権者)
 120条
1項 行為能力の制限によって取り消すことができる行為は、制限行為能力者又はその代理人、承継人若しくは同意をすることができる者に限り、取り消すことができる。
2項 詐欺又は強迫によって取り消すことができる行為は、瑕疵ある意思表示をした者又はその代理人若しくは承継人に限り、取り消すことができる。
(取り消すことができる行為の追認)
 122条
取り消すことができる行為は、第120条に規定する者が追認したときは、以後、取り消すことができない。ただし、追認によって第三者の権利を害することはできない。
(追認の要件)
 124条
1項 追認は、取消しの原因となっていた状況が消滅した後にしなければ、その効力を生じない。
2項 成年被後見人は、行為能力者となった後にその行為を了知したときは、その了知をした後でなければ、追認をすることができない。
3項 前2項の規定は、法定代理人又は制限行為能力者の保佐人若しくは補助人が追認をする場合には、適用しない。
(法定追認)
 125条
1項 前条の規定により追認をすることができる時以後に、取り消すことができる行為について次に掲げる事実があったときは、追認をしたものとみなす。ただし、異議をとどめたときは、この限りでない。
 1号 全部又は一部の履行
 2号 履行の請求
 3号 更改
 4号 担保の供与
 5号 取り消すことができる行為によって取得した権利の全部又は一部の譲渡
 6号 強制執行
(取消権の期間の制限)
 126条
取消権は、追認をすることができる時から5年間行使しないときは、時効によって消滅する。行為の時から20年を経過したときも、同様とする。
(条件が成就した場合の効果)
 127条
1項 停止条件付法律行為は、停止条件が成就した時からその効力を生ずる。
2項 解除条件付法律行為は、解除条件が成就した時からその効力を失う。
3項 当事者が条件が成就した場合の効果をその成就した時以前にさかのぼらせる意思を表示したときは、その意思に従う。
(既成条件)
 131条
1項 条件が法律行為の時に既に成就していた場合において、その条件が停止条件であるときはその法律行為は無条件とし、その条件が解除条件であるときはその法律行為は無効とする。
2項 条件が成就しないことが法律行為の時に既に確定していた場合において、その条件が停止条件であるときはその法律行為は無効とし、その条件が解除条件であるときはその法律行為は無条件とする。
3項 前2項に規定する場合において、当事者が条件が成就したこと又は成就しなかったことを知らない間は、第128条及び第129条の規定を準用する。
(不法条件)
 132条
不法な条件を付した法律行為は、無効とする。不法な行為をしないことを条件とするものも、同様とする。
(不能条件)
 133条
1項 不能の停止条件を付した法律行為は、無効とする。
2項 不能の解除条件を付した法律行為は、無条件とする。
(随意条件)
 134条
停止条件付法律行為は、その条件が単に債務者の意思のみに係るときは、無効とする。
(期限の利益及びその放棄)
 136条
1項 期限は、債務者の利益のために定めたものと推定する。
2項 期限の利益は、放棄することができる。ただし、これによって相手方の利益を害することはできない。
(期限の利益の喪失)
 137条
1項 次に掲げる場合には、債務者は、期限の利益を主張することができない。
 1号 債務者が破産手続開始の決定を受けたとき。
 2号 債務者が担保を滅失させ、損傷させ、又は減少させたとき。
 3号 債務者が担保を供する義務を負う場合において、これを供しないとき。
(時効の効力)
 144条
時効の効力は、その起算日にさかのぼる。
(時効の援用)
 145条
時効は、当事者が援用しなければ、裁判所がこれによって裁判をすることができない。
(時効の利益の放棄)
 146条
時効の利益は、あらかじめ放棄することができない。
(時効の中断事由)
 147条
1項 時効は、次に掲げる事由によって中断する。
 1号 請求
 2号 差押え、仮差押え又は仮処分
 3号 承認
(時効の中断の効力が及ぶ者の範囲)
 148条
前条の規定による時効の中断は、その中断の事由が生じた当事者及びその承継人の間においてのみ、その効力を有する。
(裁判上の請求)
 149条
裁判上の請求は、訴えの却下又は取下げの場合には、時効の中断の効力を生じない。
(支払督促)
 150条
支払督促は、債権者が民事訴訟法第392条に規定する期間内に仮執行の宣言の申立てをしないことによりその効力を失うときは、時効の中断の効力を生じない。
(和解及び調停の申立て)
 151条
和解の申立て又は民事調停法若しくは家事審判法による調停の申立ては、相手方が出頭せず、又は和解若しくは調停が調わないときは、1箇月以内に訴えを提起しなければ、時効の中断の効力を生じない。
(破産手続参加等)
 152条
破産手続参加、再生手続参加又は更生手続参加は、債権者がその届出を取り下げ、又はその届出が却下されたときは、時効の中断の効力を生じない。
(催告)
 153条
催告は、6箇月以内に、裁判上の請求、支払督促の申立て、和解の申立て、民事調停法若しくは家事審判法による調停の申立て、破産手続参加、再生手続参加、更生手続参加、差押え、仮差押え又は仮処分をしなければ、時効の中断の効力を生じない。
(承認)
 156条
時効の中断の効力を生ずべき承認をするには、相手方の権利についての処分につき行為能力又は権限があることを要しない。
(中断後の時効の進行)
 157条
1項 中断した時効は、その中断の事由が終了した時から、新たにその進行を始める。
2項 裁判上の請求によって中断した時効は、裁判が確定した時から、新たにその進行を始める。
(未成年者又は成年被後見人と時効の停止)
 158条
1項 時効の期間の満了前6箇月以内の間に未成年者又は成年被後見人に法定代理人がないときは、その未成年者若しくは成年被後見人が行為能力者となった時又は法定代理人が就職した時から6箇月を経過するまでの間は、その未成年者又は成年被後見人に対して、時効は、完成しない。
2項 未成年者又は成年被後見人がその財産を管理する父、母又は後見人に対して権利を有するときは、その未成年者若しくは成年被後見人が行為能力者となった時又は後任の法定代理人が就職した時から6箇月を経過するまでの間は、その権利について、時効は、完成しない。
(夫婦間の権利の時効の停止)
 159条
夫婦の一方が他の一方に対して有する権利については、婚姻の解消の時から6箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。
(相続財産に関する時効の停止)
 160条
相続財産に関しては、相続人が確定した時、管理人が選任された時又は破産手続開始の決定があった時から6箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。
(天災等による時効の停止)
 161条
時効の期間の満了の時に当たり、天災その他避けることのできない事変のため時効を中断することができないときは、その障害が消滅した時から2週間を経過するまでの間は、時効は、完成しない。
(所有権の取得時効)
 162条
1項 20年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得する。
2項 10年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その占有の開始の時に、善意であり、かつ、過失がなかったときは、その所有権を取得する。
(所有権以外の財産権の取得時効)
 163条
所有権以外の財産権を、自己のためにする意思をもって、平穏に、かつ、公然と行使する者は、前条の区別に従い20年又は10年を経過した後、その権利を取得する。
(消滅時効の進行等)
 166条
1項 消滅時効は、権利を行使することができる時から進行する。
2項 前項の規定は、始期付権利又は停止条件付権利の目的物を占有する第三者のために、その占有の開始の時から取得時効が進行することを妨げない。ただし、権利者は、その時効を中断するため、いつでも占有者の承認を求めることができる。
(債権等の消滅時効)
 167条
1項 債権は、10年間行使しないときは、消滅する。
2項 債権又は所有権以外の財産権は、20年間行使しないときは、消滅する。
(定期給付債権の短期消滅時効)
 169条
年又はこれより短い時期によって定めた金銭その他の物の給付を目的とする債権は、5年間行使しないときは、消滅する。
(3年の短期消滅時効)
 170条
1項 次に掲げる債権は、3年間行使しないときは、消滅する。ただし、第2号に掲げる債権の時効は、同号の工事が終了した時から起算する。
 1号 医師、助産師又は薬剤師の診療、助産又は調剤に関する債権
 2号 工事の設計、施工又は監理を業とする者の工事に関する債権
(2年の短期消滅時効)
 172条
1項 弁護士、弁護士法人又は公証人の職務に関する債権は、その原因となった事件が終了した時から2年間行使しないときは、消滅する。
2項 前項の規定にかかわらず、同項の事件中の各事項が終了した時から5年を経過したときは、同項の期間内であっても、その事項に関する債権は、消滅する。
 173条 1項 次に掲げる債権は、2年間行使しないときは、消滅する。
 1号 生産者、卸売商人又は小売商人が売却した産物又は商品の代価に係る債権
 2号 自己の技能を用い、注文を受けて、物を製作し又は自己の仕事場で他人のために仕事をすることを業とする者の仕事に関する債権
 3号 学芸又は技能の教育を行う者が生徒の教育、衣食又は寄宿の代価について有する債権
(1年の短期消滅時効)
 174条
1項 次に掲げる債権は、1年間行使しないときは、消滅する。
 1号 月又はこれより短い時期によって定めた使用人の給料に係る債権
 2号 自己の労力の提供又は演芸を業とする者の報酬又はその供給した物の代価に係る債権
 3号 運送賃に係る債権
 4号 旅館、料理店、飲食店、貸席又は娯楽場の宿泊料、飲食料、席料、入場料、消費物の代価又は立替金に係る債権
 5号 動産の損料に係る債権
(判決で確定した権利の消滅時効)
 174条の2
1項 確定判決によって確定した権利については、10年より短い時効期間の定めがあるものであっても、その時効期間は、10年とする。裁判上の和解、調停その他確定判決と同一の効力を有するものによって確定した権利についても、同様とする。
2項 前項の規定は、確定の時に弁済期の到来していない債権については、適用しない。
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