民法(相続)

第5編(882条〜1044条) 一部抜粋
(相続開始の原因)
 882条
相続は、死亡によって開始する。
(相続開始の場所)
 883条
相続は、被相続人の住所において開始する。
(相続回復請求権)
 884条
相続回復の請求権は、相続人又はその法定代理人が相続権を侵害された事実を知った時から5年間行使しないときは、時効によって消滅する。相続開始の時から20年を経過したときも、同様とする。
(相続に関する胎児の権利能力)
 886条
1項 胎児は、相続については、既に生まれたものとみなす。
2項 前項の規定は、胎児が死体で生まれたときは、適用しない。
(子及びその代襲者等の相続権)
 887条
1項 被相続人の子は、相続人となる。
2項 被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき、又は第891条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その相続権を失ったときは、その者の子がこれを代襲して相続人となる。ただし、被相続人の直系卑属でない者は、この限りでない。
3項 前項の規定は、代襲者が、相続の開始以前に死亡し、又は第891条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その代襲相続権を失った場合について準用する。
(直系尊属及び兄弟姉妹の相続権)
 889条
1項 次に掲げる者は、第887条の規定により相続人となるべき者がない場合には、次に掲げる順序の順位に従って相続人となる。
 1号 被相続人の直系尊属。ただし、親等の異なる者の間では、その近い者を先にする。
 2号 被相続人の兄弟姉妹
2項 第887条第2項の規定は、前項第2号の場合について準用する。
(配偶者の相続権)
 890条
被相続人の配偶者は、常に相続人となる。この場合において、第887条又は前条の規定により相続人となるべき者があるときは、その者と同順位とする。
(相続人の欠格事由)
 891条
1項 次に掲げる者は、相続人となることができない。
 1号 故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者
 2号 被相続人の殺害されたことを知って、これを告発せず、又は告訴しなかった者。ただし、その者に是非の弁別がないとき、又は殺害者が自己の配偶者若しくは直系血族であったときは、この限りでない。
 3号 詐欺又は強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、撤回し、取り消し、又は変更することを妨げた者
 4号 詐欺又は強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、又は変更させた者
 5号 相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者
(推定相続人の廃除)
 892条
遺留分を有する推定相続人(相続が開始した場合に相続人となるべき者をいう。以下同じ。)が、被相続人に対して虐待をし、若しくはこれに重大な侮辱を加えたとき、又は推定相続人にその他の著しい非行があったときは、被相続人は、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求することができる。
(遺言による推定相続人の廃除)
 893条
被相続人が遺言で推定相続人を廃除する意思を表示したときは、遺言執行者は、その遺言が効力を生じた後、遅滞なく、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求しなければならない。この場合において、その推定相続人の廃除は、被相続人の死亡の時にさかのぼってその効力を生ずる。
(推定相続人の廃除の取消し)
 894条
1項 被相続人は、いつでも、推定相続人の廃除の取消しを家庭裁判所に請求することができる。
2項 前条の規定は、推定相続人の廃除の取消しについて準用する。
(相続の一般的効力)
 896条
相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。
(祭祀に関する権利の承継)
 897条
1項 系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。ただし、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が承継する。
2項 前項本文の場合において慣習が明らかでないときは、同項の権利を承継すべき者は、家庭裁判所が定める。
 899条 各共同相続人は、その相続分に応じて被相続人の権利義務を承継する。
(法定相続分)
 900条
1項 同順位の相続人が数人あるときは、その相続分は、次の各号の定めるところによる。
 1号 子及び配偶者が相続人であるときは、子の相続分及び配偶者の相続分は、各2分の1とする。
 2号 配偶者及び直系尊属が相続人であるときは、配偶者の相続分は、3分の2とし、直系尊属の相続分は、3分の1とする。
 3号 配偶者及び兄弟姉妹が相続人であるときは、配偶者の相続分は、4分の3とし、兄弟姉妹の相続分は、4分の1とする。
 4号 子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。ただし、嫡出でない子の相続分は、嫡出である子の相続分の2分の1とし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の2分の1とする。
(遺言による相続分の指定)
 902条
1項 被相続人は、前2条の規定にかかわらず、遺言で、共同相続人の相続分を定め、又はこれを定めることを第三者に委託することができる。ただし、被相続人又は第三者は、遺留分に関する規定に違反することができない。
2項 被相続人が、共同相続人中の1人若しくは数人の相続分のみを定め、又はこれを第三者に定めさせたときは、他の共同相続人の相続分は、前2条の規定により定める。
(特別受益者の相続分)
 903条
1項 共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、前3条の規定により算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする。
2項 遺贈又は贈与の価額が、相続分の価額に等しく、又はこれを超えるときは、受遺者又は受贈者は、その相続分を受けることができない。
3項 被相続人が前2項の規定と異なった意思を表示したときは、その意思表示は、遺留分に関する規定に違反しない範囲内で、その効力を有する。
(寄与分)
 904条の2
1項 共同相続人中に、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から共同相続人の協議で定めたその者の寄与分を控除したものを相続財産とみなし、第900条から第902条までの規定により算定した相続分に寄与分を加えた額をもってその者の相続分とする。
2項 前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所は、同項に規定する寄与をした者の請求により、寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して、寄与分を定める。
3項 寄与分は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から遺贈の価額を控除した残額を超えることができない。
4項 第2項の請求は、第907条第2項の規定による請求があった場合又は第910条に規定する場合にすることができる。
(遺産の分割の協議又は審判等)
 907条
1項 共同相続人は、次条の規定により被相続人が遺言で禁じた場合を除き、いつでも、その協議で、遺産の分割をすることができる。
2項 遺産の分割について、共同相続人間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、各共同相続人は、その分割を家庭裁判所に請求することができる。
3項 前項の場合において特別の事由があるときは、家庭裁判所は、期間を定めて、遺産の全部又は一部について、その分割を禁ずることができる。
(遺産の分割の方法の指定及び遺産の分割の禁止)
 908条
被相続人は、遺言で、遺産の分割の方法を定め、若しくはこれを定めることを第三者に委託し、又は相続開始の時から5年を超えない期間を定めて、遺産の分割を禁ずることができる。
(遺産の分割の効力)
 909条
遺産の分割は、相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし、第三者の権利を害することはできない。
(相続の開始後に認知された者の価額の支払請求権)
 910条
相続の開始後認知によって相続人となった者が遺産の分割を請求しようとする場合において、他の共同相続人が既にその分割その他の処分をしたときは、価額のみによる支払の請求権を有する。
(共同相続人間の担保責任)
 911条
各共同相続人は、他の共同相続人に対して、売主と同じく、その相続分に応じて担保の責任を負う。
(遺産の分割によって受けた債権についての担保責任)
 912条
1項 各共同相続人は、その相続分に応じ、他の共同相続人が遺産の分割によって受けた債権について、その分割の時における債務者の資力を担保する。
2項 弁済期に至らない債権及び停止条件付きの債権については、各共同相続人は、弁済をすべき時における債務者の資力を担保する。
(資力のない共同相続人がある場合の担保責任の分担)
 913条
担保の責任を負う共同相続人中に償還をする資力のない者があるときは、その償還することができない部分は、求償者及び他の資力のある者が、それぞれその相続分に応じて分担する。ただし、求償者に過失があるときは、他の共同相続人に対して分担を請求することができない。
(遺言による担保責任の定め)
 914条
前3条の規定は、被相続人が遺言で別段の意思を表示したときは、適用しない。
(相続の承認又は放棄をすべき期間)
 915条
1項 相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。
2項 相続人は、相続の承認又は放棄をする前に、相続財産の調査をすることができる。
 916条 相続人が相続の承認又は放棄をしないで死亡したときは、前条第1項の期間は、その者の相続人が自己のために相続の開始があったことを知った時から起算する。
 917条 相続人が未成年者又は成年被後見人であるときは、第915条第1項の期間は、その法定代理人が未成年者又は成年被後見人のために相続の開始があったことを知った時から起算する。
(相続の承認及び放棄の撤回及び取消し)
 919条
1項 相続の承認及び放棄は、第915条第1項の期間内でも、撤回することができない。
2項 前項の規定は、第1編(総則)及び前編(親族)の規定により相続の承認又は放棄の取消しをすることを妨げない。
3項 前項の取消権は、追認をすることができる時から6箇月間行使しないときは、時効によって消滅する。相続の承認又は放棄の時から10年を経過したときも、同様とする。
4項 第2項の規定により限定承認又は相続の放棄の取消しをしようとする者は、その旨を家庭裁判所に申述しなければならない。
(単純承認の効力)
 920条
相続人は、単純承認をしたときは、無限に被相続人の権利義務を承継する。
(法定単純承認)
 921条
1項 次に掲げる場合には、相続人は、単純承認をしたものとみなす。
 1号 相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき。ただし、保存行為及び第602条に定める期間を超えない賃貸をすることは、この限りでない。
 2号 相続人が第915条第1項の期間内に限定承認又は相続の放棄をしなかったとき。
 3号 相続人が、限定承認又は相続の放棄をした後であっても、相続財産の全部若しくは一部を隠匿し、私にこれを消費し、又は悪意でこれを相続財産の目録中に記載しなかったとき。ただし、その相続人が相続の放棄をしたことによって相続人となった者が相続の承認をした後は、この限りでない。
(限定承認)
 922条
相続人は、相続によって得た財産の限度においてのみ被相続人の債務及び遺贈を弁済すべきことを留保して、相続の承認をすることができる。
(共同相続人の限定承認)
 923条
相続人が数人あるときは、限定承認は、共同相続人の全員が共同してのみこれをすることができる。
(限定承認の方式)
 924条
相続人は、限定承認をしようとするときは、第915条第1項の期間内に、相続財産の目録を作成して家庭裁判所に提出し、限定承認をする旨を申述しなければならない。
(限定承認をしたときの権利義務)
 925条
相続人が限定承認をしたときは、その被相続人に対して有した権利義務は、消滅しなかったものとみなす。
(相続債権者及び受遺者に対する公告及び催告)
 927条
1項 限定承認者は、限定承認をした後5日以内に、すべての相続債権者(相続財産に属する債務の債権者をいう。以下同じ。)及び受遺者に対し、限定承認をしたこと及び一定の期間内にその請求の申出をすべき旨を公告しなければならない。この場合において、その期間は、2箇月を下ることができない。
2項 第79条第2項及び第3項の規定は、前項の場合について準用する。
(公告期間満了後の弁済)
 929条
第927条第1項の期間が満了した後は、限定承認者は、相続財産をもって、その期間内に同項の申出をした相続債権者その他知れている相続債権者に、それぞれその債権額の割合に応じて弁済をしなければならない。ただし、優先権を有する債権者の権利を害することはできない。
(相続の放棄の方式)
 938条
相続の放棄をしようとする者は、その旨を家庭裁判所に申述しなければならない。
(相続の放棄の効力)
 939条
相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす。
(遺言の方式)
 960条
遺言は、この法律に定める方式に従わなければ、することができない。
(遺言能力)
 961条
15歳に達した者は、遺言をすることができる。
 962条 第5条、第9条、第13条及び第17条の規定は、遺言については、適用しない。
(包括遺贈及び特定遺贈)
 964条
遺言者は、包括又は特定の名義で、その財産の全部又は一部を処分することができる。ただし、遺留分に関する規定に違反することができない。
(相続人に関する規定の準用)
 965条
第886条及び第891条の規定は、受遺者について準用する。
(被後見人の遺言の制限)
 966条
1項 被後見人が、後見の計算の終了前に、後見人又はその配偶者若しくは直系卑属の利益となるべき遺言をしたときは、その遺言は、無効とする。
2項 前項の規定は、直系血族、配偶者又は兄弟姉妹が後見人である場合には、適用しない。
(普通の方式による遺言の種類)
 967条
遺言は、自筆証書、公正証書又は秘密証書によってしなければならない。ただし、特別の方式によることを許す場合は、この限りでない。
(自筆証書遺言)
 968条
1項 自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。
2項 自筆証書中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。
(公正証書遺言)
 969条
1項 公正証書によって遺言をするには、次に掲げる方式に従わなければならない。
 1号 証人2人以上の立会いがあること。
 2号 遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授すること。
 3号 公証人が、遺言者の口述を筆記し、これを遺言者及び証人に読み聞かせ、又は閲覧させること。
 4号 遺言者及び証人が、筆記の正確なことを承認した後、各自これに署名し、印を押すこと。ただし、遺言者が署名することができない場合は、公証人がその事由を付記して、署名に代えることができる。
 5号 公証人が、その証書は前各号に掲げる方式に従って作ったものである旨を付記して、これに署名し、印を押すこと。
(公正証書遺言の方式の特則)
 969条の2
1項 口がきけない者が公正証書によって遺言をする場合には、遺言者は、公証人及び証人の前で、遺言の趣旨を通訳人の通訳により申述し、又は自書して、前条第2号の口授に代えなければならない。この場合における同条第3号の規定の適用については、同号中「口述」とあるのは、「通訳人の通訳による申述又は自書」とする。
2項 前条の遺言者又は証人が耳が聞こえない者である場合には、公証人は、同条第3号に規定する筆記した内容を通訳人の通訳により遺言者又は証人に伝えて、同号の読み聞かせに代えることができる。
3項 公証人は、前2項に定める方式に従って公正証書を作ったときは、その旨をその証書に付記しなければならない。
(秘密証書遺言)
 970条
1項 秘密証書によって遺言をするには、次に掲げる方式に従わなければならない。
 1号 遺言者が、その証書に署名し、印を押すこと。
 2号 遺言者が、その証書を封じ、証書に用いた印章をもってこれに封印すること。
 3号 遺言者が、公証人1人及び証人2人以上の前に封書を提出して、自己の遺言書である旨並びにその筆者の氏名及び住所を申述すること。
 4号 公証人が、その証書を提出した日付及び遺言者の申述を封紙に記載した後、遺言者及び証人とともにこれに署名し、印を押すこと。
2項 第968条第2項の規定は、秘密証書による遺言について準用する。
(方式に欠ける秘密証書遺言の効力)
 971条
秘密証書による遺言は、前条に定める方式に欠けるものがあっても、第968条に定める方式を具備しているときは、自筆証書による遺言としてその効力を有する。
(秘密証書遺言の方式の特則)
 972条
1項 口がきけない者が秘密証書によって遺言をする場合には、遺言者は、公証人及び証人の前で、その証書は自己の遺言書である旨並びにその筆者の氏名及び住所を通訳人の通訳により申述し、又は封紙に自書して、第970条第1項第3号の申述に代えなければならない。
2項 前項の場合において、遺言者が通訳人の通訳により申述したときは、公証人は、その旨を封紙に記載しなければならない。
3項 第1項の場合において、遺言者が封紙に自書したときは、公証人は、その旨を封紙に記載して、第970条第1項第4号に規定する申述の記載に代えなければならない。
(成年被後見人の遺言)
 973条
1項 成年被後見人が事理を弁識する能力を一時回復した時において遺言をするには、医師2人以上の立会いがなければならない。
2項 遺言に立ち会った医師は、遺言者が遺言をする時において精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く状態になかった旨を遺言書に付記して、これに署名し、印を押さなければならない。ただし、秘密証書による遺言にあっては、その封紙にその旨の記載をし、署名し、印を押さなければならない。
(証人及び立会人の欠格事由)
 974条
1項 次に掲げる者は、遺言の証人又は立会人となることができない。
 1号 未成年者
 2号 推定相続人及び受遺者並びにこれらの配偶者及び直系血族
 3号 公証人の配偶者、4親等内の親族、書記及び使用人
(共同遺言の禁止)
 975条
遺言は、2人以上の者が同一の証書ですることができない。
(死亡の危急に迫った者の遺言)
 976条
1項 疾病その他の事由によって死亡の危急に迫った者が遺言をしようとするときは、証人3人以上の立会いをもって、その1人に遺言の趣旨を口授して、これをすることができる。この場合においては、その口授を受けた者が、これを筆記して、遺言者及び他の証人に読み聞かせ、又は閲覧させ、各証人がその筆記の正確なことを承認した後、これに署名し、印を押さなければならない。
2項 口がきけない者が前項の規定により遺言をする場合には、遺言者は、証人の前で、遺言の趣旨を通訳人の通訳により申述して、同項の口授に代えなければならない。
3項 第1項後段の遺言者又は他の証人が耳が聞こえない者である場合には、遺言の趣旨の口授又は申述を受けた者は、同項後段に規定する筆記した内容を通訳人の通訳によりその遺言者又は他の証人に伝えて、同項後段の読み聞かせに代えることができる。
4項 前3項の規定によりした遺言は、遺言の日から20日以内に、証人の1人又は利害関係人から家庭裁判所に請求してその確認を得なければ、その効力を生じない。
5項 家庭裁判所は、前項の遺言が遺言者の真意に出たものであるとの心証を得なければ、これを確認することができない。
(伝染病隔離者の遺言)
 977条
伝染病のため行政処分によって交通を断たれた場所に在る者は、警察官1人及び証人1人以上の立会いをもって遺言書を作ることができる。
(在船者の遺言)
 978条
船舶中に在る者は、船長又は事務員1人及び証人2人以上の立会いをもって遺言書を作ることができる。
(船舶遭難者の遺言)
 979条
1項 船舶が遭難した場合において、当該船舶中に在って死亡の危急に迫った者は、証人2人以上の立会いをもって口頭で遺言をすることができる。
2項 口がきけない者が前項の規定により遺言をする場合には、遺言者は、通訳人の通訳によりこれをしなければならない。
3項 前2項の規定に従ってした遺言は、証人が、その趣旨を筆記して、これに署名し、印を押し、かつ、証人の1人又は利害関係人から遅滞なく家庭裁判所に請求してその確認を得なければ、その効力を生じない。
4項 第976条第5項の規定は、前項の場合について準用する。
(遺言の効力の発生時期)
 985条
1項 遺言は、遺言者の死亡の時からその効力を生ずる。
2項 遺言に停止条件を付した場合において、その条件が遺言者の死亡後に成就したときは、遺言は、条件が成就した時からその効力を生ずる。
(遺贈の放棄)
 986条
1項 受遺者は、遺言者の死亡後、いつでも、遺贈の放棄をすることができる。
2項 遺贈の放棄は、遺言者の死亡の時にさかのぼってその効力を生ずる。
(包括受遺者の権利義務)
 990条
包括受遺者は、相続人と同一の権利義務を有する。
(受遺者の死亡による遺贈の失効)
 994条
1項 遺贈は、遺言者の死亡以前に受遺者が死亡したときは、その効力を生じない。
2項 停止条件付きの遺贈については、受遺者がその条件の成就前に死亡したときも、前項と同様とする。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。
(遺贈の無効又は失効の場合の財産の帰属)
 995条
遺贈が、その効力を生じないとき、又は放棄によってその効力を失ったときは、受遺者が受けるべきであったものは、相続人に帰属する。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。
(不特定物の遺贈義務者の担保責任)
 998条
1項 不特定物を遺贈の目的とした場合において、受遺者がこれにつき第三者から追奪を受けたときは、遺贈義務者は、これに対して、売主と同じく、担保の責任を負う。
2項 不特定物を遺贈の目的とした場合において、物に瑕疵があったときは、遺贈義務者は、瑕疵のない物をもってこれに代えなければならない。
(遺言書の検認)
 1004条
1項 遺言書の保管者は、相続の開始を知った後、遅滞なく、これを家庭裁判所に提出して、その検認を請求しなければならない。遺言書の保管者がない場合において、相続人が遺言書を発見した後も、同様とする。
2項 前項の規定は、公正証書による遺言については、適用しない。
3項 封印のある遺言書は、家庭裁判所において相続人又はその代理人の立会いがなければ、開封することができない。
(過料)
 1005条
前条の規定により遺言書を提出することを怠り、その検認を経ないで遺言を執行し、又は家庭裁判所外においてその開封をした者は、5万円以下の過料に処する。
(遺言執行者の指定)
 1006条
1項 遺言者は、遺言で、1人又は数人の遺言執行者を指定し、又はその指定を第三者に委託することができる。
2項 遺言執行者の指定の委託を受けた者は、遅滞なく、その指定をして、これを相続人に通知しなければならない。
3項 遺言執行者の指定の委託を受けた者がその委託を辞そうとするときは、遅滞なくその旨を相続人に通知しなければならない。
(遺言の撤回)
 1022条
遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って、その遺言の全部又は一部を撤回することができる。
(前の遺言と後の遺言との抵触等)
 1023条
1項 前の遺言が後の遺言と抵触するときは、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなす。
2項 前項の規定は、遺言が遺言後の生前処分その他の法律行為と抵触する場合について準用する。
(遺言書又は遺贈の目的物の破棄)
 1024条
遺言者が故意に遺言書を破棄したときは、その破棄した部分については、遺言を撤回したものとみなす。遺言者が故意に遺贈の目的物を破棄したときも、同様とする。
(撤回された遺言の効力)
 1025条
前3条の規定により撤回された遺言は、その撤回の行為が、撤回され、取り消され、又は効力を生じなくなるに至ったときであっても、その効力を回復しない。ただし、その行為が詐欺又は強迫による場合は、この限りでない。
(遺言の撤回権の放棄の禁止)
 1026条
遺言者は、その遺言を撤回する権利を放棄することができない。
(遺留分の帰属及びその割合)
 1028条
1項 兄弟姉妹以外の相続人は、遺留分として、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める割合に相当する額を受ける。
 1号 直系尊属のみが相続人である場合 被相続人の財産の3分の1
 2号 前号に掲げる場合以外の場合 被相続人の財産の2分の1
(遺留分の算定)
 1029条
1項 遺留分は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与した財産の価額を加えた額から債務の全額を控除して、これを算定する。
2項 条件付きの権利又は存続期間の不確定な権利は、家庭裁判所が選任した鑑定人の評価に従って、その価格を定める。
 1030条 贈与は、相続開始前の1年間にしたものに限り、前条の規定によりその価額を算入する。当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与をしたときは、1年前の日より前にしたものについても、同様とする。
(遺贈又は贈与の減殺請求)
 1031条
遺留分権利者及びその承継人は、遺留分を保全するのに必要な限度で、遺贈及び前条に規定する贈与の減殺を請求することができる。
(贈与と遺贈の減殺の順序)
 1033条
贈与は、遺贈を減殺した後でなければ、減殺することができない。
(遺贈の減殺の割合)
 1034条
遺贈は、その目的の価額の割合に応じて減殺する。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。
(受贈者による果実の返還)
 1036条
受贈者は、その返還すべき財産のほか、減殺の請求があった日以後の果実を返還しなければならない。
(受贈者の無資力による損失の負担)
 1037条
減殺を受けるべき受贈者の無資力によって生じた損失は、遺留分権利者の負担に帰する。
(負担付贈与の減殺請求)
 1038条
負担付贈与は、その目的の価額から負担の価額を控除したものについて、その減殺を請求することができる。
(不相当な対価による有償行為)
 1039条
不相当な対価をもってした有償行為は、当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知ってしたものに限り、これを贈与とみなす。この場合において、遺留分権利者がその減殺を請求するときは、その対価を償還しなければならない。
(減殺請求権の期間の制限)
 1042条
減殺の請求権は、遺留分権利者が、相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知った時から1年間行使しないときは、時効によって消滅する。相続開始の時から10年を経過したときも、同様とする。
(遺留分の放棄)
 1043条
1項 相続の開始前における遺留分の放棄は、家庭裁判所の許可を受けたときに限り、その効力を生ずる。
2項 共同相続人の1人のした遺留分の放棄は、他の各共同相続人の遺留分に影響を及ぼさない。
(代襲相続及び相続分の規定の準用)
 1044条
第887条第2項及び第3項、第900条、第901条、第903条並びに第904条の規定は、遺留分について準用する。
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